それではまず、虐待が起きる原因について、僕が思う結論を先に述べたいと思います。虐待が起きる原因は、本当に様々だと思うので、これ一つが原因という物は決める事は出来ない。しかし施設での虐待を考えていくと、どうしても↓の要因が関係してくると思わざるを得ない。
原因は…職員への補償の薄さ。月並みだが色々考えると、やはりここに行き着いてしまう。
なんの面白みもない結論ですね。はい。ただ補償の薄さというが、仮に補償を厚くしても虐待が無くなるとは思っていない。ただ減る可能性はあるかな?と思う。
どういう事かというと、施設で重度の精神疾患を持つ方々を支援をするという事は、多くの人がストレスを抱えやすい環境だと思う。その為、どうしても支援者として働くうちに、自分に強いストレスと不快感を与えてくる利用者に対し、敵意や不快感が湧いたり辟易とした気持ちになってしてしまう可能性が高く存在する。
ところが、基本的には福祉業界「そこは言ってはいけない」し、「表現される事すらNG」みたいな風潮すらある。その為、職員のストレスや溜め込んでしまう不快感などに目を向けられ、ケアが十分にされる事は殆どないし、おまけに薄給である大まかに言うとこんな感じである。
細かな事情を順を書き記していきたいと思う。支援者の視点から見た施設での諸々をありのままを読んで、読んでいただいた方に各々判断していただきたい。
まずは最初…精神障がい者の施設での支援の仕事で避けて通ることは出来ない。「利用者の粗暴」について私が思う事を書いていきたいと思います。ご興味のある方のみお付き合いください。
障がいの程度。関わる中で優しい気持ちになる方々。
利用者の粗暴行為。これは障がいをもつ人と接する仕事で、避けることは出来ないと思う。ただ粗暴行為と一口に言っても程度が色々とあって、本当に全く言っていいほど粗暴をしない人もいれば、ある特定の条件でのみ情緒が不安定になったり、不安から時々叩いてしまう。なんて人もいる。
何が言いたいのかというと、障がいを持っていても、粗暴行為をしない人も居れば、時々してしまうが、軽く叩く程度で、やられた方も「可愛いものだ。」「微笑ましい。」と、幼児と接するような暖かな気持ちになれる人々もいる。そんなふうに障がいを持つ方々でも、程度が軽かったり、関わりの中で優しい気持ちになれる人も確かに存在するので、一括りには出来ない。
なので今回の記事では、線引きをするのは申し訳ないが、そういう方々は除外させていただく。施設で何故虐待が起きるのか?という事を考えた場合、特殊な場合を除いて上記のような暖かな気持ちになったり、可愛げを感じる方々は、いわゆる障がいの程度が軽い方は多分その対象に入らない。
虐待の対象になってしまうのは、恐らく下記の様な方々だと思うのだ。
▪️強度行動を支援すると言う事。
皆さんは「強度行動障がい」という言葉を聞いた事があるだろうか?「きょうこう」なんて略して使われる事も多いこの言葉。
身近な人にこれをもっている人が居たり、福祉業界にたずさわっている方はお馴染みの言葉かもしれないが、一般の方は聞いた事がない言葉ではないでしょうか。僕も福祉業界に入るまで全く聞いた事がなかった言葉である。
精神障がいにも色々なものがありますが「強度行動障がい」この判定を受けた利用者に関わる際に、全く身構えないでリラックスして平然と笑っていられる人というのは殆どいないのではないだろうか?
参考までに僕が過去に働いていた施設で、この強度行動障がいの判定を受けていた利用者が持っていた特性を軽く書き記してみたいと思います。
・大きな奇声を上げて走り回る。(何時間も)
・壁に自分の頭を強く打ちつける。(血が出ても止められない)
・身近な人に延々と唾をはきかける。(逃げても追いかけて吐き続ける)
・身近な人に噛み付く。(血が出ても止められない)
・身近な人を叩く。蹴る。(手加減なし)
・自分に対して噛み付く。(血が出ても止められない)
・自分の小さな傷が気になり、傷を弄り続け肉をエグって傷を拡げてしまう。
・大便や小便を、部屋や廊下など、トイレ以外の場所でする。
・大便を口に入れて飲み込んでしまう。
・大便を血だらけの傷に塗ってしまう。
・大便を顔や身体や、部屋の壁などに塗る。
・公共の場で全裸になろうとする or 実際に脱いでしまう。
・夜中に覚醒し朝まで起きている。(起床後に上記の行動へ移行する事もある)
・夜中に起きていて寂しくなり、他利用者の部屋の電気を勝手につけてしまう。
・夜中に起きていて寂しくなり、静寂の中、職員が来るまで鉄の扉を叩き続ける。
・壁紙などの一部のほつれが気になり、数時間かけ壁紙を全部剥がしてしまう。
・木製の扉を叩き続け、腕が傷だらけになりながらも、扉を破壊して穴を開けてしまう。
・パジャマや衣類などを破ってしまう。時にはそれを口に詰めてしまう。(窒息の危険大)
・トイレの便器に衣類を詰めてそのまま水を流し、トイレを逆流させて床を水浸しにしてしまう。
僕の5年間の経験であるが、すぐに思い出せるだけでもこんな感じである。時間をかけて思い出せばもっとあると思う。上記の行動を「へ〜。大変だな〜」と他人事で流さないで、是非立ち止まって少しだけでも想像してほしい。上記の行動によって起きる様々な結果を。
そしてそれらを「自分が後始末をする事」「責任をとる事」「それらを継続しておこなう事」を。
もちろん個人によって特性は違う為、粗暴系は全くないが、汚物系はもっと頻発してしまったり、他児には何もしないが、職員には激しく粗暴があるなど、人によって取る行動は様々である。重ねて言うが強度行動障がいの判定がある人が、必ず上記のような行動をとる訳ではないだろうが、程度の差はあっても、強度行動障がいは上記の様な特性を持っている方が多いとは思う。
強度行動障がいについて現場職員の時に思っていた本音の本音。
上記を読んで皆さんは率直にどう思うだろうか??
これを読んでいる方で現在、身近な人に強度行動障がいの方がいたり、強度行動障がいのお子さんを奮闘しながら前向きに育てている方、頑張りつつもどこかに活路を見出そうとしている方がいらっしゃったら本当に凄いと心から尊敬します。
そしてこれからの僕の発言は、大変に失礼というか、こんな事を書いて申し訳ない気持ちにもなります。
自身の身近な人の特性や、ご自身の長年の頑張りを否定された様な気持ちになって、とても不快な気持ちになる可能性もありますが、申し訳ない。ここは僕が独断と偏見でありのままを書いている僕のブログなので、僕が体験した現場の実情や僕個人の想いをあえて書かせていただきます。
「障がい特性ゆえに仕方ないよな。」「仕事だからやらなきゃな。」とは思いつつ。僕は、やはり粗暴系に関しては「怖い」と思っていた。そして汚物系に関しては正直言って「嫌悪感」を抱いていた。これが僕個人の本音の本音であった。
怖いってどういう事?
夜勤中、利用者の住むユニットの天井近くの窓から差し込む僅かな月明かり。殆ど暗がりの廊下で、自分に向かって臨戦体制で向かってくる利用者。
障害者の入所施設ではこういった事が割と日常茶飯事であった。パニックからの情緒乱れだとは分かってはいるものの、暗闇で自分に敵意や粗暴を向けてくる存在、人によっては自分より体格が良い場合も多くある。
そういう存在が目の前にいるというのは、正直恐怖以外の何者でもなかったし、これに関しては5年間働いて慣れたと思う事はなかった。怪我のリスクをすぐ近くに感じる暗闇の中の孤独な空間。この状況には心を毎回削られていたなと今思い返しても思う。
粗暴行為を行っている利用者の対応をする時は、心に恐怖心があったし、都度自分の内側から勇気を出し気持ちを奮い立たせて、アドレナリンを全放出して、余裕なく対応していた感じがあった。
利用者の粗暴の矛先が自分に向かってきただけだったら逃げて一旦距離をおき、落ち着くのを待ったりも出来るのだが、粗暴の矛先が他児に向かっていってしまったり、物品破壊などを行ってしまったら二次災害になる可能性がある為、それは即座に止めないといけない。
場合によっては、利用者Aが利用者Bを殴り倒し大怪我を負わせる事も考えられるので、安易にその場を離れるわけにもいかない。今自分がとれる手段を使って場を沈めるしか道はない。
そういう場合、止め方はどうするのだろうか?勿論努力はするが、スマートに止められる事ばかりではない。パニックになって大暴れして粗暴する利用者を止める事はそんなに容易な事では無い。体格もいい利用者もいる、複数同時に不調になる場合もある。それをいつも華麗にスマートに止められる人って、熟練の福祉職員でもそう多くないと思われる。
瞬間的には、やはりマンパワーに頼らざるを得ない現場
5年ほど現場で働いて思った事は、福祉の世界には、愛情あふれた精神や志が掲げられているが、同時に綺麗事も多くあふれていると感じた。
上記の利用者の粗暴などに関してはその最たるもので、「虐待はダメ」と言いつつ綺麗事抜きにマンパワーで止めざるを得ない事態は現実的に多々あるし、マンパワーを除外した有効的な代替案も、残念ながら殆ど普及していないという事であった。
想像してみてほしい。駅で酒に酔った成人男性が、突然自分とパートナーに絡んできた。相手に冷静な判断力は見られない。自身の行動をまるでコントロール出来ていない感じである。
「なんかあの人やばいな〜。」心にそんな違和感がわく。「ちょっと怖いな〜。」そんな風に心に警戒心が沸く中、相手の男性が聞き取りにくい声で何かをぶつぶつ言ってきたかと思ったら、突然自分達に敵意を向けて襲いかかってきた。何が彼の地雷だったのかも分からない。
相手は法律もなにも関係ないという無敵の人状態で、形振りかまわない様子で自分達に向かってきた。傷害罪などの法律が抑止力にはなっていない状態。話し合いは通じない。
目の前の不測の事態に、自分が即座に対応しなければ、自分は勿論、大切な人が傷つく可能性もある。入所施設で暮らす強度行動障がいや重度の知的障がいをもつ利用者の粗暴と対峙する時って、割とこういう心理状態に近いと思うのだ。
皆さんはこういった状態になった際、どういう行動を取るだろうか??
僕はこういう状態になった時は、アドレナリン全開にして、臨戦体制での制止対応にならざるを得なかった。相手に怪我はさせられないが、こちらだって怪我をしたくない。
だけど、適当に受け流して止まる雰囲気は全くない。全力で向かってくる相手の腕を押さえたり、布団を被せて視線を遮って無力化を図ったりなど、とにかく自分も相手も怪我をしないように、無い知恵絞ってその場にあるものでなんとか対応する。そんな事の連続であった。
勿論こんな稚拙な対応をしてしまうのは、僕が福祉職員として未熟だっただけで、熟練者はこんな臨戦体制にならなくても、大丈夫かもしれない。華麗に対応できる人も中にはいるのかもしれない。
日頃からこうならない様に環境づくりをして、アセスメントをしっかりととって予防する事もとても大切だとは勿論思う。だがやはりどんなに環境を整えても利用者のパニックからの粗暴行為はゼロにはならないと思う。
入所して間もない利用者は環境への不慣れからパニックや粗暴になり得るし、入所して長期間が経つと、今度は慣れや依存でフラストレーションが溜まり、それが粗暴につながったりもする。
それに予防策をとっても、いざ起きてしまったら目の前で起きている粗暴を伴うトラブルには、何かしらの方法で瞬間的に対応せざるを得ない。その瞬間の対応はマンパワーしか選択肢がない。そういう事態は必ずあると思う。僕はそう思っている。(これ、マンパワー一切いらない。こうやると上手くいきますよ。って熟練者がいたら、本当に教えてほしいし、是非技術指導してほしいと思う。)
連鎖するパニック
僕が以前働いていた施設の中の1つユニットにはA君からH君、8人の障害を持つ利用者がいた。それぞれに特性の違う個性豊かな面々であった。基本的に利用者の不快感情を取り除いて、快感情の元暮らしてもらう事を目指す何でも屋さんが施設職員で、その為に業務をおこなっているのだが‥
ある状況がA君には心地よくても、それはB君には苦痛だったりする。
その為A君の快の為に職員が行動すると今度はB君が不快になりB君が不調になって暴れたりする。あちらを立てればこちらが立たず。こういう事が毎日の様にあった。
連鎖が起きるのは考えてみたら集団生活をしているだから当たり前と言えば当たり前。A~H君全てが満足して円満になるという状況は1年を通して殆どなく、全て解決するのは不可能である。これが集団で暮らしている施設の現状でなくなる事はないと思っている。
その為、常に不満を抱く利用者は存在し、いなくなることはない。ということはトラブルはいつだって些細なきっかけで起こりうるという事。そして一度トラブルになってしまえば、そこにはマンパワーで止めざるを得ない事態が高確率で存在する。
少し話は逸れてしまったが、以上のことから、5年勤めてて、マンパワーでの制止的な対応が全く必要ではないと感じた事は一度もなかった。
怪我のリスクからくる恐怖感
重度の精神疾患を持つ利用者の暮らす施設で働く職員には、怪我のリスクが常に付きまとう。前述の様にパニックや不調はいつおこるか分からないし、利用者によっては自分より体格も良かったり、力も強い上に加減してはくれないのは既に述べた通りだ。
僕の先輩には、利用者が暴れて蹴飛ばした扉に指を挟んで、爪が剥がれてしまった方や、利用者の壁への頭突きを止めようとして、壁と利用者のおでこの間に指を挟んでしまい骨折したり、不調時の利用者のヘッドバットを喰らって鼻が折れてしまった若い女性の職員なども居た。これらの怪我をした方は、入職10年以上のベテランもいた。長く勤めて慣れているから大丈夫という話でもない。程度の差はあれ、入所施設の現状は少なからずこういう怪我のリスクが付きまとう。
職員はそういう事態が起きない様に事前に環境を整えて気をつける。(具体的には利用者が不調になりにくい様に、嫌いなものを遠ざけたり、本人にストレス負荷がかからない様に、ルーティーン行動を徹底したり等)しかしそれでも不調にはなるし、不調パニックから粗暴行為が起きてしまったらマンパワーで止めざるを得ない、そんな状態が現実問題あると思うのだ。
そして研修や勉強会など専門知識をつける機会はあるにはあるが、それを勉強したからといって、利用者の粗暴が0になる訳でもないし、職員が魔法の様に即座にスマートに対応できる訳でもない。
長くなったが、これらを総じて僕は業務中に怖いなという感情が消える事はなかった。
まとめ
以上が粗暴系についてと、それに伴って職員が抱く感情についてである。上記はあくまで僕個人が抱いた感情であるが、粗暴行為に対して僕と似た様な感情を抱く職員は少なくないのではなかろうか?支援者と言っても1人の人間。粗暴による怪我のリスクを強く感じると、やはり恐怖や不安を感じてしまうと思う。
しかし、それでも対応しなければならないとなった場合、その恐怖や不安を押し殺し行動する為に、それ以上の勇気を振り絞ってアドレナリンを全開にして、ある種の興奮状態、戦闘状態での対応になる事が多い。程度の差はあっても、似た様な感情を抱く人は多いのではないだろうか??
次回は…汚物系について、思う事を書き記していきたいと思う。
コメント